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5秒のAI動画で破綻する動き10種|実運用で禁止した理由と、代わりに使う動き

回る・跳ぶ・口元に手。却下率の実測と、禁止リストの中身をそのまま公開

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5秒のAI動画を毎日作っていると、「この動きは何度作っても使えない」というものがはっきりしてきます。うちではそうした動きを禁止リストに入れ、二度と選ばれないようにしています。この記事では、そのうち回転・跳躍と口元の仕草に関する10種を取り上げます。どの動きを、どんな理由で外し、代わりに何を使っているのか。却下率の実測値と一緒に、実運用の記録をそのまま書きます。

禁止した10種の分類

分類禁止した動きの例何が起きたか代わりに使う動き
体ごと回る(4種)その場で回ってスカートが広がる5 秒には速すぎる。顔がカメラから外れ、顔立ちを保てない左右にゆっくり揺れる / 肩越しに振り返る
跳ねる(1種)小さく跳ねて半回転速すぎる。着地までに顔がカメラから外れるつま先立ちで手を上に伸ばす
速い振付(1種)指差し・手を振る・肩を弾ませるを素早く1 動作に 1 秒も割けず、せわしない指でハートを作る / ピースサイン(1 動作だけ)
口元に手を当てる(3種)驚いた顔から笑い、手は口元驚きか笑いか照れか、意味が決まらない手を振る / 両手で顔を覆ってのぞく
唇に指を当てる(1種)考える仕草で下唇に指何をしている仕草なのか伝わらない視線を横に流して考え、ゆっくり戻す

先に結論: 禁止した10種と、2つの理由

禁止リストに入れた動きは、定義を残したまま、抽選で絶対に選ばれないようにしています。この記事で取り上げるのは次の 10 種です。

理由は大きく分けて 2 つだけです。

  • 5 秒に対して速すぎる(回る・跳ねる・振付の 6 種)
  • 何をしている仕草なのか伝わらない(口元・唇の 4 種)

「AI 動画は指が増える」「手が溶ける」とよく言われます。ところが禁止の理由として記録に残っているもので、指や手の描画崩れを理由にしたものは この 10 種の中に 1 つもありません。禁止に至った理由は、描画の崩れより「速さ」と「伝わらなさ」でした。

前提: この5秒動画はどう作っているか

破綻の話は、動画の作り方と切り離せません。工程は次のとおりです。

  1. SDXL と PuLID で、キャラクターの顔立ちを固定した開始画像を 1 枚作る
  2. その画像を Wan 2.2(画像から動画を作るモデル)に渡し、動きを英文で指示する
  3. 81 フレーム × 16fps で、約 5.06 秒の動画ができる
  4. 公開前に人が見て、承認か却下かを決める

動きの指示は、あらかじめ用意した「モーション」の定義から 1〜2 個(基本は 2 個)を選び、`, then ` でつないだ 1 文にします。たとえば次のような形です。

she lifts one hand and gives a small playful wave to camera, ... , then her gaze drifts off to the side as if thinking about something, ...

押さえておきたいのは、動画モデルが見ているのは開始画像 1 枚だけだという点です。開始画像に写っていないもの、たとえばカメラから外れた後にもう一度こちらを向いた顔は、動画の途中でモデルが新しく描き起こすことになります。

実測: 動作の切り替わりが多いほど却下が増えた

最初に疑ったのは「5 秒に詰め込む動きの量」でした。動きの指示に含まれる then(=動作の切り替わり)の数ごとに、公開前の確認で却下された割合を集計しました。

切り替わりが増えるほど、却下率が単調に上がっています。

計算すると理由が見えます。5.06 秒にモーションを 2 つ並べ、それぞれが「回る → 止まる → ポーズ」のように内部で 3 段階を持っていると、つなぎ目を含めて合計 5 段階。1 動作あたり約 1 秒しかありません。見た人が「せわしない」「動きが速すぎる」と感じる速さです。

却下の理由は動きだけではないので、この数字は相関であって因果の証明ではありません。4 回のケースは n=6 と少なく参考値です。それでも、当時いちばん多かった切り替わり 2 回のパターン(n=141)で 62% が却下されていた以上、動きの詰め込みすぎは無視できませんでした。

破綻1: 体ごと回る・跳ねる・速い振付(6種)

禁止した 6 種の中身です。どれも楽しげで、静止画で想像する分には魅力的に見える動きでした。

禁止した動き指示の中身(要約)
肩を回してから回転肩をゆっくり回し、そのまま回転。髪が広がり、笑って正面に戻る
その場で回ってスカートが広がる軽く一回転、裾が広がり、正面に戻って笑う
髪を払ってから回転首を振って髪を払い、続けてその場で一回転
回って裾がふわりと広がる回転して裾が膝の高さで広がり、片手で押さえて笑う
跳ねて半回転嬉しそうに小さく跳ね、素早く半回転して着地
短い振付指差し・手を振る・肩を弾ませる、をリズムよく素早く

外した理由は 2 つ記録されています。

  1. 5 秒には速すぎる。前の節の計算どおり、1 動作に 1 秒前後しか割けない
  2. 回ると顔がカメラから外れる。開始画像で固定した顔立ちを、動画の後半で保てなくなる

2 つ目は、前提の節で書いた「動画モデルは開始画像 1 枚しか見ていない」と直結します。一回転して戻ってきた顔は、モデルが描き直した顔です。

誤解の無いように書くと、ダンスそのものは禁止していません。左右にゆっくり体重を移す揺れ、頭だけこちらに向ける振り向き、肩越しに振り返る動きは今も使っています。外したのは「体ごと回る」「跳ぶ」「素早く振る」の 3 つです。

回転は「数える」だけでは捕まらなかった

切り替わりが問題なら、機械的に数えて上限を付ければいい。そう考えて、1 本の動画に入る切り替わりの合計に上限 3 を設けました。ところが、ここで想定外のことが分かりました。

  • 禁止した 6 種のうち 5 種は、指示文の中に `then` が 1 つも無かった
  • 「回って、髪が広がって、正面に戻って笑う」を、カンマでつないだ 1 つの動作として書いていた

つまり数え方の上では、切り替わり 0 回の穏やかな動きに見えていたのです。

上限が実際に効いたのは全体の 1.0% だけで、平均はほとんど動きませんでした。

効いたのは上限ではなく、速い動きを名前で特定して外したことと、指示文から「もう一度繰り返す」のような反復を消して 1 動作にまとめたことでした。上限は、それでも漏れた極端なケースを切る保険として残しています。

破綻2: 口元に手を当てる(3種)

次の 3 種は、速さではなく意味の問題で外しました。

禁止した動き指示の中身(要約)
笑って口元に手ふっと笑い、口元に手を当てて一瞬目をそらし、また見る
驚きから笑いへ目を丸くして驚き、笑い出す。手は口の近く
驚いて指先を唇へ小さく驚いて指先を唇に当て、手はそのまま口元に残る

公開前の確認で出た判断は「驚いているのか笑っているのか分からない」でした。

静止画なら、口元に手を当てた笑顔はごく自然に見えます。ところが 5 秒の動画では、手が上がって口を覆う瞬間の表情が、驚きにも、笑いにも、照れにも見える。そしてどれとも決まらないまま動画が終わります。

誤解されやすいのですが、手を顔の近くに持っていくこと自体は禁止していません。今も使っている動きの例です。

  • 投げキス(意図がはっきりしているので、同じ理由には当たらないと判断して残した)
  • ピースサインや指で作るハート
  • 両手で顔を覆い、指の隙間からのぞく(照れの仕草として読み取りやすい)
  • 頬に手を添えて首をかしげる

基準は「手が顔に近いかどうか」ではなく、5 秒見た人が、その仕草の意味を 1 つに決められるかです。

破綻3: 考える仕草で唇に指(1種)

口元の 3 種を禁止した 2 日後に、同じ理由で 1 種を追加しました。

禁止した動き指示の中身(要約)
考える仕草で唇に指指先で下唇に一拍触れ、視線を横に流して戻る

禁止の記録に書かれた理由は、口元の 3 種と同じく「5 秒の動画では、何がしたいのか分からない絵になる」です。「考える仕草」は写真なら考えているように読めますが、動画ではそう伝わりませんでした。

反省点があります。最初の禁止は「驚いたり笑ったりして口元に手をやる」動きが対象で、考える仕草で唇に指を当てる動きは対象外として残っていました。場面は違っても、伝わらない理由は同じです。禁止の範囲は仕草の見た目や場面ではなく、禁止した理由で決めないと、同じ失敗が形を変えて残ります。

代わりに使っているのは、視線を横に流して考え、ゆっくりこちらに戻す表情や、頬杖をついてぼんやりする動きです。

禁止リストの外で、書き方を直した失敗

動きを丸ごと外すのではなく、指示の書き方を直して解決した失敗もあります。自分で動画を作る時には、むしろこちらの方が役に立つかもしれません。

書き方起きたこと直し方
動画の途中で頬が赤らむピンクの色むらが出た時間とともに色が変わる指示を書かない
「笑わずに」などの否定形否定が伝わらず、かえって笑う「唇を閉じた落ち着いた表情」のように肯定形で書く
立つ動きと座る動きを連結両方を満たそうとして、混ざった不自然な姿勢になるつなぐ 2 つの動きの姿勢を揃える
手を使わずに服が動く布が溶ける・体を突き抜けるような崩れを誘発先に手を書き、その手が動かす文にする
「もう一度繰り返す」5 秒に同じ動きが 2 回入り、速くなる1 動作にまとめる

姿勢の矛盾は、試しに 3,000 本分の動きの指定を機械的に作ったところ、11.0%(330 件)に含まれていました。選ぶ段階で姿勢を揃えるよう直しましたが、その後も 6 件(0.2%) が残りました。

原因は、選んだ動きを後の工程で別の抽選結果と組み合わせ直していたことです。部品を作る段階で正しくても、組み立てで崩れる。

検査は途中ではなく、最終的にモデルへ渡す指示そのものに対して行う必要があります。今は全モーションの文面に否定形が無いかも、自動テストで毎回確認しています。

壊れていなくても失敗: 全員が笑っている

禁止リストとは別に、動きの一覧を数え直して見つかった問題もあります。

2026 年 8 月時点で、全 246 モーション中 111 件(45%)が笑顔や笑いを含んでいました。よく使う汎用の動きに絞ると、37 件中 33 件(89%)です。一方で、物憂げな表情は 2 件しかありませんでした。

1 本ずつ見れば何の問題もありません。ところが一覧で並べると、どのキャラクターも同じ顔で笑っているように見えます。個々の動画は壊れていないのに、サイト全体としては単調になる、という種類の失敗です。

対処は、既存の動きを書き換えることではなく、笑わない選択肢を足すことでした。

  • ひと呼吸して肩の力が抜け、落ち着いた目でこちらを見る
  • 何か考えるように視線を横に流し、ゆっくり戻す
  • 目を閉じて、風に髪をなびかせる
  • 小さく首をかしげて、画面の外の音に耳を澄ませる

書き換えを選ばなかったのは、すでに承認して公開した動画と絵柄が変わってしまうためです。比率を下げたいなら、既存を削るより選択肢を増やす方が影響範囲を読めます。

自分で5秒のAI動画を作る人へのチェックリスト

ここまでの記録を、画像から動画を作る時のチェックリストにまとめます。うちが検証したのは Wan 2.2 の 5 秒クリップですが、短い動画に共通する考え方として使えるはずです。

  1. 動作の切り替わりは 5 秒で 3 つまで。できれば 1〜2 つに抑える
  2. カンマでつないだ動きも 1 つずつ数える。then が無くても「回って、止まって、笑う」は 3 動作
  3. 体ごと回る・跳ぶ・素早く振る動きは避ける。振り向きは頭や肩だけにする
  4. 顔はなるべく開始画像と同じ向きのまま。カメラから外れた顔は描き直しになる
  5. 手を顔に近づけるなら、意味が 1 つに決まる仕草だけ。手を振る、ピースサイン、両手で顔を覆う。口元に手を当てる、唇に指を当てる仕草は避ける
  6. 「繰り返す」「何度も」を書かない
  7. 否定形を書かない。避けたい状態の反対を肯定形で書く
  8. 途中で色が変わる指示を書かない
  9. 2 つの動きをつなぐなら姿勢を揃える
  10. 指示を長くしない。うちは動画側に渡す指示の中央値を 799 文字から 576 文字に削った

最後に 1 つ。どれだけ指示を整えても、公開前に人が見る工程は省けません。この記事の禁止リストは、すべて人が見て「使えない」と判断した動画から作られています。

禁止の仕方: 削除せず、選ばれないようにする

この記事で取り上げた 10 種は、定義を削除していません。動きの一覧には残したまま、抽選の段階で必ず弾く方式にしています。

削除しなかった理由は 3 つです。

  • 戻すのが 1 行で済む。モデルが更新されて回転を綺麗に描けるようになったら、再検証してすぐ戻せる
  • 禁止した理由を、その動きのすぐ隣に書いておける
  • いつ、どの動画を見て禁止したかを後から追える

実際、この記事に書いた数字はすべて、その記録から数え直したものです。禁止した日付も残っていて、口元に手を当てる 3 種、回転・跳躍・振付の 6 種、唇に指を当てる 1 種は、いずれも 2026 年 8 月下旬の 3 日間で順に追加しています。

一方で、回転をゆっくり描かせれば使えるのかは検証していません。速い動きを外し、ゆっくりした揺れを残す方を選んだためです。「回転はどう書いても無理」とまでは言えない、という点は正直に書いておきます。

よくある質問

AI動画で回転する動きが破綻しやすいのはなぜですか

うちの運用で記録している理由は2つです。5秒の動画では回転に割ける時間が短く、動きが速すぎて見えること。そして回ると顔がカメラから外れ、戻ってきた顔を開始画像と同じ顔立ちに保てないことです。これは実際の出力と却下の記録から判断したもので、モデル内部の仕組みまで検証したわけではありません。

手が顔に近いと必ず崩れるのですか

いいえ。うちが禁止したのは、口元に手を当てる・唇に指を当てるといった、5秒では意味が1つに決まらない仕草です。手を振る、ピースサイン、両手で顔を覆う、投げキスなど、意図がはっきりした仕草は今も使っています。指が増えるなどの描画崩れを理由に禁止した動きは、この10種の中にありません。

5秒の動画に動作はいくつまで入れられますか

うちでは動作の切り替わりを合計3つまでにしています。切り替わりの数ごとの却下率は、0回で44%、1回で52%、2回で62%と単調に上がりました。ただしカンマでつないだ動きは機械的な数え方では0回に見えるので、実際に何動作あるかを人の目で数えることが大切です。

禁止にせず、指示文を工夫すれば直せないのですか

切り替わりの数に上限を付ける対策は試しましたが、影響したのは全体の1.0%だけでした。回転をゆっくり描かせる書き方は検証しておらず、速い動きを外してゆっくりした揺れを残す方を選んでいます。定義は削除していないので、モデルが改善されたら再検証して戻せます。

「〜しないで」と書けば避けたい動きを防げますか

防げません。否定形は伝わらず、たとえば「笑わずに」と書くとかえって笑う方向に働きます。避けたい状態の反対を「唇を閉じた落ち着いた表情」のように肯定形で書いてください。うちでは全モーションの文面に否定形が無いことを自動テストで確認しています。

Wan 2.2 以外の動画生成モデルでも同じですか

うちが検証したのは Wan 2.2 で作る約5秒の画像起点の動画だけです。5秒に動作を詰め込みすぎると速く見える、意味が1つに決まらない仕草は伝わらない、という点は動画の長さと見る人の問題なので他でも当てはまりやすいと考えていますが、他のモデルでは実測していません。

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