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AI動画1本の実際のコスト|704本作って分かった、公開できるのは半分
GPU代だけを見ていると2倍間違える。実測値で出したコスト構造
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AI動画を1本作るのにいくらかかるのか。GPUの時間単価に生成時間を掛ければ出る、と思っていました。実際には**その計算は倍近く間違えます。**704本作った実測から、本当のコスト構造を出します。
実測値まとめ
| 項目 | 実測 | 備考 |
|---|---|---|
| 動画1本の生成時間 | **平均 819 秒** | 最短 448 / 最長 5,718 秒 |
| 画像1枚の生成時間 | 平均 49 秒 | 動画の 1/17 |
| ジョブ失敗率 | **8.5%** | 670 件中 57 件。課金は発生する |
| 動画の却下率 | **約 50%** | 704 本中 337 本を非公開 |
| 生成1本のコスト | 約 $0.16 | GPU 時間のみ |
| 公開1本の実コスト | **約 $0.33** | 失敗と却下を織り込んだ値 |
先に結論
生成1本あたり約 0.16 ドル。公開できる1本あたりは約 0.33 ドル。
同じものを作っているのに 2 倍の開きがあります。理由は単純で、作ったものの半分は公開していないからです。
GPU の時間単価だけを見ていると、予算を半分に見積もることになります。
測り方
推測を混ぜず、本番のデータベースに残っている実績だけを使いました。
- 生成ジョブ 670 件(完了 613 / 失敗 57)
- そのうち動画 401 件の開始時刻と終了時刻
- 生成された動画 704 本の、公開・却下の内訳
- GPU の時間単価
ベンチマーク用に整えた環境ではなく、実際に運用しているものの記録です。他の処理と GPU を共有している状態も、そのまま含まれています。
1本あたりの生成時間
動画 401 件の実測です。
| 時間 | |
|---|---|
| 平均 | 819 秒(13.7 分) |
| 最短 | 448 秒(7.5 分) |
| 最長 | 5,718 秒(95 分) |
設定を詰めた後の理想的な条件では 11〜12 分で終わります。それでも平均は 13.7 分でした。差は GPU の混雑によるものです。
最長の 95 分は外れ値ですが、外れ値も課金されます。「理想的な条件での所要時間」で予算を組むと足りません。
画像は桁が違います。
画像は動画の 17 分の 1。同じ「AI生成」でも、コストは別物として扱う必要があります。
平均で見ると足りなくなる
「平均 13.7 分」だけを見て予算や計画を組むと外します。401 件の分布を出すとこうなります。
半分は 10.4 分で終わっています。設定を詰めた理想値(11〜12 分)に近い。
にもかかわらず平均が 13.7 分なのは、遅い側の尾が引っ張っているからです。100 本に 1 本は 53 分かかっています。中央値の 5 倍です。
| 使う場面 | 見るべき値 |
|---|---|
| 1 本あたりのコスト | 平均(尾も課金されるため) |
| 「だいたい何分で出るか」 | 中央値 |
| 何本流せるかの計画 | 上位 10%(詰め込むと詰まる) |
平均・中央値・分位点は別の質問に答えます。1 つの数字で全部を語ろうとすると、どこかで必ず外します。
失敗するジョブが 8.5%
670 件のジョブのうち 57 件が失敗しました。
重要なのは、失敗したジョブも GPU 時間を消費していることです。途中まで動いて落ちるので、成果物ゼロで課金だけが残ります。
「1本いくら」を計算するとき、成功したジョブだけで割ると安く出ます。失敗分を分母に含めないと実際の請求額に合いません。
本当のコスト要因は却下率だった
ここが一番効きます。生成した動画 704 本のうち、公開できたのは 351 本でした。
約半分を捨てています。理由は手が破綻している、動きが不自然、意図と違うものが出た、など様々です。
却下率がコストに与える影響は、掛け算ではなく割り算で効きます。
| 却下率 | 公開1本あたりの実コスト |
|---|---|
| 0% | 生成コストのまま |
| 25% | 1.33 倍 |
| 50%(うちの実績) | 2 倍 |
| 75% | 4 倍 |
却下率を 50% から 25% に下げることは、生成を 1.5 倍速くするのと同じ効果です。しかも品質は上がります。
却下率は出力の複雑さに比例する
却下率は一律ではありませんでした。種別ごとに測るとはっきり分かれます。
テキスト投稿は 125 本すべて公開していて、却下がゼロです。画像は 3 本に 1 本、動画は ほぼ 2 本に 1 本を捨てています。
理由は単純で、壊れる余地の量が違うからです。テキストは破綻しても読めば分かるし直せます。画像は手や姿勢が破綻します。動画はそれに加えて、時間方向の破綻(動きが不自然、途中で崩れる)が乗ります。
これがコストに効きます。生成時間の差は 17 倍でしたが、却下率を織り込むと差はさらに開きます。
| 生成時間 | 却下率 | 公開1件あたりの実時間 | |
|---|---|---|---|
| 動画 | 819 秒 | 49.0% | 約 1,606 秒 |
| 画像 | 49 秒 | 34.3% | 約 75 秒 |
名目 17 倍の差が、実質 21 倍になります。
「AI で作る」を一括りにして見積もらないこと。同じ 1 件でも、テキスト・画像・動画ではコストが 3 桁近く違います。動画でしか成立しない企画なのかを先に確かめる価値があります。
だから「速くする」は途中で効かなくなる
生成を速くする最適化は、やれば確実に効きます。実際に別の記事で書いたとおり、1本 21 分を 11 分まで縮めました。
しかしそれは生成コストを半分にするだけです。却下率が 50% のままなら、公開1本あたりのコストは半分の 2 倍 = 元と同じところまでしか下がりません。
- 速度の最適化には上限があります。物理的に 0 秒にはなりません
- 却下率の改善には上限が無いとは言いませんが、まだ余地が大きい
うちは速度側を先にやりました。測りやすく、効果が確実だったからです。だが数字を見た今は、次に手を付けるべきは却下率だと分かります。
見落としやすいコスト
GPU 時間以外にも積み上がるものがあります。
- 却下した動画のファイル。データベース上は却下でも、ストレージには残ります。掃除しないと課金され続けます
- 開始画像の生成。動画の前に静止画を作る構成なら、その分も乗ります
- 待ち時間。GPU を借りている間は、生成していなくても課金されます。止め忘れが一番高くつきます
一番効く節約は使っていない時に止めることです。生成していない時間の課金は、最適化のしようがない純粋な無駄です。
コストを見積もるときの手順
- 時間単価 × 平均生成時間で、生成1本のコストを出す
- 失敗率で割る(失敗したジョブも課金されている)
- 却下率で割る(ここが一番大きい)
- ストレージと待機時間を足す
1 だけで止めると、実際の半分の見積もりになります。
うちの場合、1 の答えは 0.16 ドルでしたが、3 まで通すと 0.33 ドルになりました。
よくある質問
なぜ平均が理想値より長いのか
GPUを他の処理と共有しているためです。設定を詰めた条件では11〜12分で終わりますが、混雑時はモデルの再読み込みなどが挟まり、実測の平均は13.7分でした。最長は95分です。理想値で予算を組むと足りなくなります。
却下率50%は高すぎないか
公開するものの基準をどこに置くかで大きく変わります。基準を厳しくするほど却下は増え、コストは上がります。逆に緩めれば安くなりますが、公開物の質が落ちます。コストと品質のトレードオフがここに集約されています。
画像と動画でコストがそんなに違うのか
実測で17倍の差がありました。動画は複数フレームを生成するので当然ではありますが、「AI生成」と一括りにして見積もると桁を間違えます。用途によっては画像で足りることも多いはずです。
一番効く節約は何か
使っていない時にGPUを止めることです。生成していない時間の課金は純粋な無駄で、最適化の余地すらありません。その次が却下率の改善で、生成速度の最適化はその後になります。
この数字は他の環境でも当てはまるか
生成時間はGPUの世代・解像度・ステップ数で大きく変わるので、そのままは当てはまりません。移植できるのは計算の順番(生成コスト→失敗率で割る→却下率で割る)の方です。却下率を織り込まない見積もりは、どの環境でも実際より安く出ます。
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